アンバランスな苦悩
探偵の調査報告を
捨てることもできず

自分の部屋に隠すことも
心が嫌がった

親に見つかるかもしれない

何かを借りにきた
光汰に
見られるかもしれない

そう思うと部屋の中におけず

保健室の
自分の机に隠した

鍵のかかる引出しに入れた

保健室の窓から
校庭を見ると

スミレたちのクラスが
体育の授業をしていた

スミレは
勉強は苦手だけど
運動は得意だ

楽しそうに体を動かしている
姿を見ているだけで

俺は
心が温かくなった


正門に人影が見えた

視線を上げると
桜さんがいた

校庭を睨みつけている

あのときと
同じ目だった


あのときの

包丁を持っていた
桜さんと

今の桜さんの目が

俺の脳裏で

重なる

マズイ!

心臓が早鐘を打つ

桜さんの手を見る

遠くて
よくわからないけど

何かを持っている

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