アンバランスな苦悩
本当に食い散らかして
帰りやがった

一人残った保健室で
俺は掃除をする

真っ暗になった保健室には
蛍光灯が煌々と輝いていた

掃除も終わり
鞄を出すと
車のキーを手の中に収めた

病院に寄って
桜さんに顔を見せてから

やっと家に帰れる

俺は保健室のドアを閉めると廊下に出た

職員室に保健室のマスターキーを返しに行くと
階段を下りて
職員用のげた箱に向かった

2階と1階の間にある
踊り場で
男女が話をしている

仲良く肩を寄り添いあっていた

男が女の体に触れようとするが
女が嫌がっていた

傍から見れば
ただの
いちゃつきにしか見えない

「バレたら怒られるぞ」

俺は明るい声で
話しかけた

二人の男女が俺に振り返る

スミレ…

スミレと杉田だった

思わず
下唇を噛み締めていた

苛立つ

心が締め付けられた

「すみません」

杉田が慌てて立ち上がると
腰を折って謝る

「若いとついな!
気持ちはわかるけど…

バレないところでやれよ」

俺はちゃんと
笑顔で言えてるだろうか

杉田の肩を叩くと
階段を下り始めた

「外は暗いから
気をつけて
帰れよ」

後ろにいる二人に手を振った
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