香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
気づいていたんだ。
よく見ているなあ。
「……少し家が恋しくなったんです。でも、大丈夫です。お城の皆さんがよくしてくれるし」
嘘はついてない。
"家"というのは異世界の家だけど……。
「……そうか。ならいい。だが忘れるな。お前はひとりじゃない。俺がいる」
彼は真剣な表情で告げる。
その言葉にまた涙腺が緩んだ。
もう……どうしてそんなに優しいの?
お願い。もうこれ以上、優しくしないで。
彼から視線を逸らし、香油の瓶を手に取って泣くのをこらえた。
「……ありがとうございます」
小声で言って彼の目に布を被せ、マッサージを開始する。
時間にしたら二時間近く施術していたかもしれない。
男性が相手の時は特に手に力を入れてマッサージするし、二時間だとさすがに疲れてしまった。
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