香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
それだけ……アレンのことが好きってことなのかな?
今日……私は城を出る。
もうこのベッドで眠ることもない。
ベッドをゆっくり下りて、布団を綺麗に整える。
時計を見れば、朝の刻をとっくに過ぎていた。
というか、もう昼の刻に近い。
「嘘、寝坊した〜!」
声を上げれば、コンコンとノックの音がして侍女が入ってきた。
「おはようございます」
「お、おはよう。あの……もう……朝食の時間終わっちゃったよね?」
あたふたしながら侍女に尋ねれば、彼女はにこやかに答えた。
「はい。ですが、アレン様がゆっくり寝かせてあげるようにと。ふふっ、愛されてますね」
その言葉にチクッと胸がいたんだ。
大事にはされているが、それは愛されているからではない。
「……そう」
小さく相槌を打つと、夜着からドレスに着替えた。
これから昼食というのが気が重い。
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