香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
ああ〜、寝坊するなんてショックだ。
出来れば、部屋に籠もりたいところだけど、お昼を食べたら城を出るのだ。
最後くらい、ちゃんと顔を出さなくては不審に思われる。
重い足取りで食堂に行けば、今日もお昼はアレンの姿はなかった。
多分政務が忙しいんだろうな。
ホッとする同時にがっかりした。
アレンに不審がられることはないけど、最後に彼に会う機会もなくなった。
落ち込むな、クルミ。
これでいいんだ。
「クルミ、もう体調はいいの?」
先に着席していたセシル様に声をかけられ、曖昧に答えた。
「あっ……はい」
どうやらアレンが私の失態を笑われないよう、みんなにうまく言ってくれたみたいだ。
本当は単なる寝坊なんです、セシル様。
心の中でそっと呟けば、彼女の隣にいるエマ王女に話しかけられた。
「ねえクルミ、昼食を食べたら、気分転換に王都の街に行きましょうよ」
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