香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
「ひょっとして王太子のネックレスって知らなかったの?」
ルーカスの質問に答えずにいると、彼はなにやらひとり言のように言った。
「兄貴もマズったな。パルクレールの王太子の婚約者を誘拐したとあってはただではすまない。アレン王太子が乗り込んで来る」
……この人は何者なのだろう?
このネックレスのことを知っているなんて普通の騎士ではないと思う。
「あなたは……一体何者なんですか?」
「俺?」
私の目を見て面白そうに微笑すると、彼は胸元からネックレスを取り出した。
それは私がしているのと形は同じで、彼の瞳と同じ紫の瞳がついていた。
「これで、大抵の奴は俺の正体に気づくけどね」
まさかこの人って……。
「ハーネスの王!?」
"王太子"と言おうとした私の言葉を遮り、ルーカスが目を細めて鼻をクンとさせる。
「なんか、焦げ臭くない?」
確かになにか燃えているような匂いがする。
すると、外から「火事だ〜!火事だ〜!」と男の子の声がした。
この声……ロイド?
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