香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
それに、どこかそわそわして、覇気がなかったように思う。
朝は元気だったのに、なぜ?
気になったが、今彼女を追いかけて追及しても、何も言わないだろう。
クルミから目を離すな。
俺の本能がそう告げる。
「ロイド」
その名を呼べば、彼はすぐに現れた。
いつもと違う俺の声音で、事態の深刻さを感じたのだろう。
いつもの騒がしい登場ではなく、音もなくやって来て俺の前に跪く。
「なんでしょうか?」
「今からしばらくクルミを見張れ。近いうちに城出するかもしれない」
「御意」
無駄なおしゃべりはせず、彼は俺の前から消えた。
ロイドが俺の侍従になったのは三年前。
実は敵国の戦争孤児で、俺が城に連れてきた。
最初は調理場で下仕事をしていたが、めきめきと頭角を現し、今では俺付きの侍従。
だが、ただの侍従ではない。
俺の間者でもある。
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