香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
姉の侍女からエマ王女がクルミを誘って王都の街に出かけたと報告があったのだ。
「そいつはもうすぐ現れるだろう。ロイドがいるからクルミは大丈夫だ」
俺がそう言うと、ヴィクターはコクッと頷いた。
「ああ」
「クルミを俺はどうすればいい?お前は気づいているんだろう?彼女が異世界から来たってことを」
俺は迷っていた。
クルミが城出したことにエマ王女が関わっていても、それはクルミの意思でもあったわけで……。
彼女を連れ戻すのは、鳥が空に羽ばたくのを籠に閉じ込めて邪魔している気分になる。
「うん。クルミが覚醒した時、僕に異世界から来たって言ったんだ。それに、アレンが立太子の礼でなくしたと言ってたネックレスをしていて、彼女の言ってることは本当だと思った」
そう。
俺は周囲にはネックレスを異世界の少女にあげたとは言わず、異世界でなくしたと伝えていた。
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