香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
クルミの姿が見えないことに焦りを感じていた。
頼む。俺の声に気づいてくれ。
すると、二階の窓ガラスがガシャンと誰かの手で割られ、銀髪の男が出てきた。
その男は足場を確認し、まだ部屋の中に誰かいるのか、窓の中に顔と腕を突っ込む。
その様子を見ていたら、すぐに窓から誰かが出てきた。
クルミ?
間違いない。
クルミの後にも男がひとり出てきた。
最初に出てきた銀髪の男が俺に目を向ける。
よく見るとその男の顔には見覚えがあった。
あれは……ハーネスのルーカス王太子。
ジーク国王の弟で、なかなかの切れ者と聞く。
ハーネスが潤っているのも、彼が暴君の兄を国政で支えているからだろう。
ルーカス王太子が灌漑設備を整えてからは農作物の収穫量が増え、パルクレールにもハーネス産の穀物や果物がたくさん入ってくる。
だが、彼がなぜクルミと一緒に?
娼館にいるということは客として来て、彼女が相手をさせられた?
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