香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
建物はパルクレールではあまり見かけない木造だった。
「……マズイな」
赤黒く燃え上がる建物を見据える。だが、燃えているのはこの赤い建物だけではない。周りの娼館も燃えていた。
「どうする、アレン?」
指示を仰ぐサイモンに告げた。
「サイモンとヴィクターの二手にわかれてまずは女たちを救出しろ」
「御意」
サイモンは真剣な目で返事をし、ヴィクターは「クルミを頼む」と俺の肩を叩いた。
「必ず救出する」とヴィクターの目を見て約束すると、ロイドに命じた。
「水を調達して消火に当たれ」
「はい」とロイドが頷いてどこかに消える。
クルミがいる娼館に一階から入ろうとしたが、ロイドが言っていたようにもう周囲はどこも火の海で踏み込めない。
こうなったら、二階から彼女を助けるしかない。
「クルミ〜!」
大声で叫んで彼女を呼ぶ。
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