香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
城に戻ると、セシル様や彼女の息子達、それにネロが私を出迎えてくれた。
セシル様が私に抱きつく。
「お帰りなさい。火事に巻き込まれてたんですってね。大変だったわね」
優しい言葉をかけられ、目頭が熱くなった。
「セシル様……今、私……すごく汚れてるんです。セシル様のドレスが汚れてしまいます」
離れようとするが、彼女はさらにギュッと私を抱きしめた。
「そんなのいいのよ。クルミが無事だったんだから」
「……セシル様。あの……とっても嬉しいのですが、息が……息が苦し……」
息が吸えなくて崩折れそうな私を見かねて、アレンがセシル様にやんわりと注意する。
「姉上、クルミが苦しがってるのでそろそろ彼女を解放してくれませんか?」
「あら、ごめんなさい。クルミの抱き心地がよくって……って、アレンはよく知ってるわよねえ」
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