香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
10、俺からの提案ーアレンside
「身体中痣だらけじゃないか」
脱衣場で彼女の身体の痣を見た時、自分を責めずにはいられなかった。
肩や背中、足にも紫の痣が出来ていて見るのも痛々しい。
自分なら痛みには慣れているし、傷が出来ても平気だからいい。
だが、彼女は女性だ。
これほどの痣、姉だったら、さぞかし「痛い!」と喚いて大騒ぎしただろう。
「どうして我慢していた?」
「……火事で痛みもそれほど感じなかったから」
クルミはしゃがみ込んで身体を隠しながら俺に言い訳する。
多分嘘はついていないだろう。
それに、彼女に当たってどうする?
クルミの場合、あの火事の状況で俺に甘えることは出来なかったはずだ。
しかも、城から逃げたという気まずさもあったに違いない。
「悪い。強く言い過ぎた。すぐに風呂に浸かれば痛みが和らぐ」
今度は優しく言って、彼女を抱き上げた。
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