香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
「だったら、アレンの部屋にだってネズミが出る可能性があるんじゃあ」
俺の部屋で寝るのを躊躇う彼女をもっともらしいことを言って説得する。
「俺ならすぐにネズミに対処できる出来るが、クルミは違うだろ?夜中にネズミが出たら、ひとり震えて過ごすんじゃないかな?」
「……それはそうですけど」
まだ迷う彼女を強引にベッドに寝かせる。
「今日はいろいろあって疲れただろう?俺が手をマッサージするから、心を楽にして眠れ」
「いや、マッサージは私が……。あっ、でも……火事で香油を全部……無くしちゃった」
クルミは起き上がってベッドを出ようとしたが、そう呟くように言って放心した顔になる。
香油を無くしてがっかりもしているだろうが、今になって火事のショックが来たんだと思う。
ポタッと彼女の涙が落ちて、シーツを濡らす。
「あれ?……あれ、あれれ?」
ポタポタ落ちる涙を手で受け止めるクルミ。
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