香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
「凄く準備がいいね。まだ結婚していないのに、もう妹を嫁に出した気分だよ」
ヴィクターは実に嬉しそうだ。
「お前の狙い通りの展開じゃないのか?」
普通に対面させるより、家出した彼女と会わせた方が俺の興味を引く。
「うん。まあ、否定はしないよ」
穏やかな目で微笑むが、彼がとても計算高い人間だと知っているのは、俺とサイモンくらいだろう。
「たまにお前が悪魔に見えることがある」
腕を組んでジーッとヴィクターを見据えれば、親友はクスッと頰を緩めた。
「それは気のせいだよ」
周囲に聞いた話では、俺とクルミが婚約することになったのは、ヴィクターが『親友の妹との婚約なら、アレンも嫌とは言いませんよ』と言って俺の父である国王を説き伏せたかららしい。
「お前……ひょっとしてクルミの正体についてなにか知ってるのか?」
こいつはクルミを記憶喪失だと本当に信じているのだろうか?
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