香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
「昔の妹とは違っただろ?」
期待に満ちたその眼差し。
こいつは俺がクルミを気に入ったと言わせたいのだ。
「ああ、姿は変わらないが、中身はまるで別人だな」
故意に当たり障りのない答えを返すと、彼は自分の妹への感情を口にしてにっこり微笑む。
「記憶をなくした妹の扱いに最初は戸惑ったけど、性格が素直になったから、凄く可愛く思えるよ」
笑顔で自分の欲しい言葉を相手に迫るところが彼らしい。
「そうだな。反応がいちいち面白い」
仕方なく認めれば、彼は満面の笑みを浮かべた。
「アレンも気に入ると思ったよ。国王に謁見しなきゃいけないし、着替えのために妹を連れて帰りたいんだけど」
「その必要はない。ドレスならこちらで用意する。彼女の部屋だってもうあるしな」
俺の寝室の隣にクルミの部屋を用意させていて、今そこに彼女がいる。
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