香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
学校の授業が終わり、アロマオイルの道具が入ったリュックを背負い駅に向かう。
スマホで音楽を聞きながら歩いていたその時、小さな子供が猛スピードで走ってくる車の前に飛び出した。
「危ない!」
子供を突き飛ばしたまではいいが、すぐ目の前に車が迫ってきて……。
今度は私が轢かれる!
思わず目を閉じるも、数秒経っても車がぶつかる気配がない。
ん?どうした?
恐る恐る目を開ければ、私は見たこともない大きなベッドで寝ていた。
目の前にいる二十二、三歳くらいのダークブラウンの髪のハンサムな青年と目が合って……。
「クルミ、良かった!階段の一番上から落ちて三日三晩眠り続けていたんだよ」
ホッとした表情になる青年は、知的な感じでメガネをかけている。
父でもなければ、お医者様でもない。
だって、ヨーロッパの昔の貴族が着るような深緑の衣を身に纏っている。
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