香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
「……あなたは誰ですか?」
ボーッとその人を見つめれば、彼は慌てた。
「クルミ?兄さんのことがわからないのか?ひょっとして、頭を打って記憶を失った?」
「兄さん?私はひとりっ子で兄なんかいない……」
夢でも見ているのだろうか?
目の前の青年は「大変だ!誰か父と医師を呼べ!」と大騒ぎする。
それから、私の父という髭を生やした五十歳くらいの男性と医者が現れ、いろいろ質問攻めにされた。
だが、何も答えられず、頭を打って記憶をなくしたことにされてしまった。
父はパルクレール国のラフォリア公爵で、公爵家は国にたった三つしかないらしい。兄はその長子、ヴィクターという。
私はそのヴィクターの妹で、クルミ。
偶然にも名前の発音は同じだった。
だけど、公爵令嬢だと聞かされてもピンとこない。
だって私は山本胡桃だもん。
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