ただ愛されたいだけなのに


 なんだか勇太の存在が鬱陶しくなってきた。あいつはきっと彼女がほしいだけなんだ。なにかとあれば——俺のどこが不満?——ほんと、笑える。そしてこうも言った「見た目もかっこいいって言ったじゃん? 仕事も、ハイスペックなのになんで?」おや、まあ。自分の良さを把握してるところはいいけど、一歩間違えればナルシストよ。
 それからわたしがこう言った「いつか引っ越すんでしょ? 今もわざわざ電車に乗らなきゃ会えないのに、これ以上離れたら会うのなんか無理だよ」これに対してヤツは答えた。「俺が行くってば」そしてわたしが「じゃあ今もあんたが来てよ」ほんとに来るって言ったらわたしはどうしたんだろう……。で、彼は笑いながら「この場合はそっちが来るものだろ! 俺一人暮らしだし」めんどーなヤツ。
 わたしって、地上最悪の女? 勇太を避け続けることでどんどん罰が当たりそうな気がしてきた。最初はあんなにときめいていたのに、今じゃ鬱陶しいなんて。

 
 翌朝、わたしは家を出る一時間三十分も前に起床したのに、学校に着いたのは四十五分ギリギリだった。わたしが席につくと同時に授業が始まった。
「それでは今日は、関数を使って表を埋めましょう」
 今では先生の存在がわたしにとって悪でしかなくなった。


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