ただ愛されたいだけなのに
「そうか。じゃあ、どこで会うの?」
「うーん、どこがいいとかある?」
わたしは聞き返した。答えは分かっているけど。
「えー……俺は特にないなぁ……夢に任せるよ」
正紀のこういうところも大好き。なんだってわたしに決めさせてくれる。
「じゃあ沖縄!」
「えっ⁉︎ そこはちょっと……冬なら、いいとは思うんだが……」
正紀は暑いのが苦手だ。
わたしは笑いながら言い返した。
「どこでもいいんじゃないの?」
「いや、まぁいいけど、俺汗ダラダラになるかもよ」
わたしはブレスレットを戻して、再びベッドに転がった。
「奈良県にしよう。鹿に会いたい」
午前二時に電話を切って、正紀は明日の学校のために夢の中へ——わたしは興奮してなかなか寝付けなかった。