この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「確かにそうですね……」

「このままですと、土砂崩れの二次被害は懸念されますが……」


 侍女二人もこの状況に訝しげな表情を見せる。でも、おじ様の決定に面と向かって異を唱える事は出来ない。


「一体どうしたのかな……」


 重大な何かがあったのだろうか?急がなければいけない何かが。二次被害すら起きても厭わないくらいの何かが。

 それならばおじ様が私を連れ出した時、その強い感情が少なからず私に伝わっていたはずだ。だけれど、全く感じ取れないくらいにおじ様の心は穏やかだったのだろう。

 不思議に思いつつも、馬車の揺れに身を任せていた。


 ――雨音に混じって、金切り声が聞こえてくるまでは。
< 229 / 654 >

この作品をシェア

pagetop