この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「何を言っているんだい?アリサも来るんだよ?」

「私が?なんで?」

「今回は領主も来るからね。領主に反逆の意思がないか確かめて欲しいんだ」


 胸が嫌な音を立てた。まさか領主がおじ様の事を軽蔑していたのが、バレたんじゃないかって。


「……分かった。用意するね」


 私の答えに満足したらしいおじ様は、そのまま部屋から出て行く。侍女達が慌ただしく身の回りの用意をし始める。私も冷や汗をかきながら、準備に取りかかった。

 一応宿に数人の護衛騎士を待機させ、おじ様、領主、侍女、私を乗せた馬車がそれぞれ一列になって出発する。王城の護衛騎士だけでなく、領主の護衛騎士も合わさって大所帯。領主の護衛騎士は王城の人達と比べて、あまり動きは洗練されていないらしく、ほんの少しだけおじ様と私の馬車から距離をとっていた。

 雨足はどんどん強くなって、遠くの方の景色は見えなくなる。窓の硝子から外を見るのは諦めて、侍女二人と向かい合った。


「ねえ。こんなに雨が降っているのに土砂崩れの現場に向かうの?危なくない?」


 外では外套を纏った騎士達が雨に打たれながら、馬を走らせている。馬も人も随分と大変そうに見えた。
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