この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】

仮面夫婦の始まり?

 キルシュライト王国王太子、ローデリヒ・アロイス・キルシュライトから縁談が来たのは、誰にとっても予想外だった。

 それだけではない。ローデリヒ・アロイス・キルシュライトはわざわざ外交官を通して、私に縁談を持ち掛けてきた。
 向こうから望んできた縁談の上、外交官は私の能力を知らない。おまけに堂々と隠すことなく、ローデリヒ・アロイス・キルシュライトは公の場で私を指名してきたらしい。

 だから、キルシュライトとアルヴォネンの貴族両方にその事実が知られてしまうことになる。

 私の元々の地位は、アルヴォネン王国に五つある公爵家の令嬢。大元を辿ると王族の血が入っている。
 身分的な問題はクリアしていた。

 それにキルシュライト王国から、この縁談が決まった際の利点として、一部輸出品の関税率引き下げ等を提案されれば、もう外交官達は目の色を変えてアルヴォネン国王に奏上した。

 絶対にこの縁談は進めるべきだと。
< 256 / 654 >

この作品をシェア

pagetop