この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 アーベルが生まれて、父親として育児を手伝いながら親バカぶりを発揮する夫に対して、可愛い息子に対して、穏やかに過ぎる日々に対して、私は罪悪感すら感じていた。

 無知だったとは言え、私が間接的に殺してしまった13人。そしてその家族64人の将来は帰ってこない。

 元凶の私が平和に過ごしていていいのだろうか?という後ろめたさがずっと残っている。

 夫も、わざわざ私みたいな曰く付きを選ばなくても、もっと他に良い令嬢はいたはずなのに。

 せめて、男性に対して恐怖心を抱く前だったら、少しは関係性は違っていたのだろうか?
 と考えて、いつも自嘲していた。

 私のした事を、私自身が忘れていいはずがない、って。



 二度目に子供が出来るような事をしたのは、夫が北国の方へ遠征に行く前日。

 激励会でお酒を飲んで、多分夫はいつもより酔っていたのだろうと思う。抱かせてくれ、と頼み込んでくるような人ではなかったし、言われたのですら初めてだった。

 側室もいないし、一応妻なのだからとそのまま頷いて――ボッコボコにしてしまった。

 きっと彼は私が最初にアッパーをキメた辺りから、酔いは覚めてた筈だ。
 最後までよく完遂出来たとずっと思っている。

 そのまま夫が北国に遠征に出掛けて、一ヶ月。
 ずっと気がかりだったが、明日の朝帰ってくるだろう、という頃に自分の下腹にうっすらと現れた紋章を見て、思わず息をのんだ。
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