この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 こちらがびっくりする位、ズササササッと派手な音をたてて後ずさりする彼の顔は真っ赤に染まっていた。一気に冷たい雰囲気が霧散する。


「え、濡れ場シーンって……あの濡れ場シーン?!」


 ちょっと過去の私ってば一体何読んでたの?!
 慌ててページの文を見ると、どう見てもミミズがダンスしていた。駄目だ男の人に見せて良かったかどうか全く分からない。

 我を取り戻すのが早かったローデリヒさんは、一つ咳払いをして「で、その本がどうかしたのか?」と冷静に尋ねてきた。


「あ!そうでした!実は、この本を含めて文字が読めないんです」

「……なに?」
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