この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「どうする?慣れるために手でも繋いでみるか?」

「え……、あ、はい」


 前、手が触れただけで振り払ってたし、ちょうどいいと思って彼の手のひらに自分のを重ねる。

 ギュッと軽く握りこまれた手をしみじみとローデリヒ様は見つめた。


「……前々から思ってはいたのだが、貴女の手は随分と小さいな」

「ローデリヒ様の手が大きいんですよ」


 骨張ってて、ちょっとゴツゴツしてる。
「そうか?」と彼が目を瞬かせて、ジッと繋いだ手を見ていたけど。特に何か言葉を交わすことなく、お互いに口を閉ざした。

 いや、一応何か話そうと思ってる。
 何か話題を出そうと思っている。
 全く出てこないだけで。

 なんかそれよりも手の方に意識が行ってしまうというか、また知恵熱が出たみたいに顔が暑いと言うか。
 前世女子校に通ってて男慣れしていないのと、今世の男嫌いが合わさってなんだか頭がパンクしそう。


「自分から提案したが、……意識をすると随分と気恥しいな」

「……はい」
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