この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 ローデリヒ様の頬も少し色付いていたけれど、手を離す事なく、そのままお互いの少し高い体温を感じていた。

 そこに紅葉のような手がペタリとくっ付く。
 驚いて二人してアーベルを見ると、私達を見て機嫌良さそうに笑っていた。ローデリヒ様も頬を緩ませて、アーベルを覗き込む。


「なんだ?仲間外れは嫌だったか?」

「あー」


 少し甘さを含んだ彼の言葉にアーベルが反応する。その様子が可愛くて、私もつられて自然と微笑んでいた。


「嫌だったのなら、すまなかったな」


 クスクスと笑いながら、ローデリヒ様は私の手と共にアーベルの小さな手も一緒に握り込んだ。
< 290 / 654 >

この作品をシェア

pagetop