この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「実は……妹が、筋肉隆々とした老年騎士と結婚したいと言ったらしく、それを聞いた祖父様が急に鍛えだして……、今では騎士団に混じって訓練をしています」

「妹……」

「妹……?」


 アーベルの話した内容の一単語だけを拾い上げた国王様とローデリヒ様は、バッと私の方を振り向く。
 正確には、私のお腹の方へと視線を向けた。


「……アーベル、その老年騎士は一体誰だ?娘と出会わないように今から手を打って置かなければならないからな」

「孫娘を誑かす野郎はどいつじゃ?ワシの国王特権でけちょんけちょんにしてやるわい」


 ジリジリとアーベルに詰め寄る二人を見ながら、私はお腹を撫でる。

 まさかこんな感じで性別が分かるとは思ってなかったけど、この子は女の子なのかあ……。


「祖父様、父様、そんなんだから妹に鬱陶しいって言われるんですよ……」


 ちょっとげんなりしているアーベルの言葉に、国王様とローデリヒ様は二人してショックを受けたように肩を落とした。

 そんな光景を見て、私は思わず笑みが零れる。
 生まれる前から随分と愛されてるみたいだよ、赤ちゃん。
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