この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 アーベルの事は父上に任せておくとして、と前置きをしつつローデリヒ様はいきなり本題に入った。


「何故父上の後宮なんかにいたんだ?」

「えーっと、それは……」


 どこから説明したものか……、と悩みながら順を追って話していく。特に隠すこともなかった。

 ハイデマリー様と後宮の目の前で会ったこと。ハイデマリー様がローデリヒ様を失脚させようと思っていたこと。どういう事なのか知りたくてついて行ったこと。失脚計画なんて本当はなくて、ハイデマリー様が私の能力を試したかったこと。お茶会なので、お茶を飲まされそうになったこと。

 全て包み隠さずに伝えた。ローデリヒ様は相変わらず腕を組んだまま難しい顔をしていたけれど、時々小さく頷いて聞いてくれていた。


「……結果的にローちゃんに助けて貰って、何とか脱出出来たけど結構ピンチだったかも……、しれないです……」

「そうだな」


 あっさりと頷いたローデリヒ様は、腕組みを解く。そして脱力したように深々と息を吐いた。


「……能力が知られていたというのも大問題だが、貴女の話には幾つかの誤解がある。まず、ハイデマリー殿が計画を立てていなくとも、私を失脚させたいのは本当の事だろう」

「え……?」


 目を瞬かせてローデリヒ様を見返すと、彼は考え込むように口元に手を当てた。
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