この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「私の母が一側室という事は知っているな?」

「あ……、はい。確かべティーナ様、でしたよね?」

「ああ。伯爵家の養女として貴族名鑑には載っているが……、元々はジギスムントとゼルマの子で、父上の乳兄弟だったんだ。ジギスムントは伯爵家の遠縁だったんだが、爵位のないほとんど平民のような生活をしていて、母上も側室ではなく侍女として父上に仕えていた」


 そういえば詳しく聞いたことのない、ローデリヒ様のお母さんの話。ジギスムントさんとゼルマさんが義理の祖父母だと知っていたけれど、平民のような生活をしていた伯爵家の遠縁と国王様って……随分と。


「……身分差、ありますね」

「ああ。ジギスムントもゼルマも、自分の娘が側室になるなんて、そんな事思いもしなかっただろうな。母上も人を使う側(・・・・・)の教育を受けているはずがなかった。大誤算だったのは、父上と母上が恋愛をしてしまった(・・・・・・・・・)事くらいか」


 まるで、恋愛自体が失敗かのように語るローデリヒ様の表情はいつも通り。過去にあった事をそのまま伝えているだけ。


「父上は乳兄弟として、幼馴染のように育った母上をずっと好いていたらしい。……母上もおそらくは。……侍女から側室になった母上は、随分と出世をしたと当時は言われていたと、聞いたことがある。その時の後宮にはもう既に、数人の側室がいたんだ」


 ……国王様、昔から後宮は賑やかだったんですね。
 現在も賑やかだった後宮を思い出し、遠い目になった私の様子を見て、ローデリヒ様は国王様のフォローをする。


「……まあ、キルシュライト王家は子供が少ないからな。側室は周りから押し切られて入れられる事が多い。父上もそんな経緯で、既に側室は何人もいた。その中でも、ハイデマリー殿は一番最初に後宮入りした側室だったんだ」

「えっ?!一番最初?!」
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