この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 怖すぎてトイレの扉越しにローデリヒさんに喋りかけまくっていた。ローデリヒさんは気長にもちゃんと私に付き合ってくれた。

 なんだ、ローデリヒさん良い人じゃん。
 高校の数学の先生みたいに愛想ないだけで。


「どうやら魔法に関する知識もごっそり抜けてしまっているみたいだな……」

「まほう?」


 ベッドの上で胡座をかいたローデリヒさんは、難しい顔をして腕を組んだ。昼間は髪の毛をセットしていたみたいで、サラサラしてる金髪が乱れている。


「昼間は記憶が混乱している事を演技だと疑ってすまなかった。性格がかなり変わっているが、随分と受け答えもしっかりしているし、アイデンティティも確立していたから誤解していた」


 本当は記憶喪失じゃないから、ローデリヒさんの言っていることは間違いじゃない。

 本来なら、彼が謝るのは筋違いなんだ。
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