この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 ーーーーーーーーーーーーー
 ーーーーーーーー



「っ、……う……?」

「ローデリヒ様?」


 ずっと力を無くしていた左手がピクリと動く。
 あれから近衛騎士さんに呼ばれて国王様に会った。説明は全部後でするから、ローデリヒ様に付いてやってくれと言われたんだよね。実際、ローデリヒ様に会ってみると、ぐったりとした様子で医務室で眠っていた。ずっと寝不足だったし、やっぱり無茶してたのかな?

 ローデリヒ様の海色の瞳が薄らと見える。何度か瞬きをして、ぼんやりと私を視界に捉えたようで少しホッとした。

 やや熱い手を握って、ずっと傍についていたんだけど、中々目を覚まさなかったんだよね。本当によかった。


「ローデリヒ様、良かった。私の事分かります?」


 ローデリヒ様の目の前でヒラヒラと手を振る。段々と意識がしっかりしてきたようで、私の手はパシリ、と掴まれた。


「あ……ああ」


 やや掠れた声でローデリヒ様は頷く。彼が身を起こすのを横目で見ながら、「水飲みます?」と聞いた。ずっと寝てたし、喉でも乾いていそうだ。けれど返事の代わりに、掴まれたままの手が引っ張られる。


「ロ、ローデリヒ様?」


 私が顔を上げると、熱に浮かされたような海色が映る。驚いて反応出来ないまま、唇が重なった。
< 474 / 654 >

この作品をシェア

pagetop