この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 それからしばらくしてからだった。


「ローデリヒ、お前を毒に慣らそうと思う」


 そう、父親に言われたのは。


「毒……」

「本当はもう少し大人になってからにしようと思っていたのだが、こんな事が起こった以上、お前の命を守る為に必要だ」

「はい……」


 嫌だなあ、と思った。が、父親も通った道だと言われると、極度の負けず嫌いのローデリヒは逃げなかった。

 だが、その出来事が父親と母親の仲を修復不可能にしてしまった。
 今まで一緒にお茶をする事もあった。だが、父親が母親の元にくる回数が目に見えて減った。

 そして、父親が母親の元に来ても、母親は父親に冷たく当たるようになった。目に見えてギスギスしているのはローデリヒでも丸分かり。

 これ以上ローデリヒの事で仲が悪くなって欲しくなくて、母親に必死に「大丈夫だ」と説得した。だが、母親はローデリヒを憐れむばかり。
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