この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 確かに毒を体に慣らすのは大変だったが、成人前の王族でも耐えられるようにされているもの。思っていたよりも過酷ではなかった。

 大丈夫なのに、母親はローデリヒの事に関しては過保護だ。前までマメを潰すと手当てしてくれていたのに、毒で生死をさまよってからは小さなかすり傷だけで大騒ぎするようになった。


「アロイス。剣を握るなんて危ないことはしないで、貴方は私の傍にいて」


 それだけ心配を掛けてしまったのだろう。だが、次第に後宮からも中々出してもらえなくなったローデリヒにもストレスが溜まってしまった。


「母上、僕は大丈夫です。だって、父上もやっていた事です!」

「貴方はディートヘルム様と違うの」

「……っ、どうして!」

「貴方は体が他の人よりもだいぶ弱いのよ?!」


 眉間に皺を寄せて、険しい顔をする母親にやや気圧された。しかし、ローデリヒには納得出来なかった。


「僕は風邪もほとんど引いたことがありません!」


 むしろ他の人よりも体は丈夫だという自信があったから。周りで季節風にかかる人が多くても、ローデリヒはピンピンとしていた。よく寝込むべティーナを見ている事も相まって、自身が体が弱いと思ったことはない。


「駄目よ!貴方は産まれた時、人の形をしていなかったんだもの……!無理をしてはいけないわ……!」


 ローデリヒは息を飲んだ。意識朦朧としていた時に言い争っていた事は、本当だったのだと知った。


「……人の形をしていないって、どういう……?」
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