この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「父上が来ると同時に、アーベルはその場を離脱した。エーレンフリートと父上が私の私室に残った形になる。そのすぐ後に私が私室に訪れた。ほぼ同時刻、ヴァーレリーが走り去るアーベルとすれ違っていたようだ。ヴァーレリーは私だと思っていたらしいが」


 だからローデリヒ様の私室にエーレンフリートさんと国王様が居たのね……。馬乗りになってるのはどうかと思うけど。


「前提として、王太子の私室の鍵は、何人も持てるものではない。私自身1本。父上が1本。侍従達が2本ローテーションしている。1本は予備で厳重に保管されていて、利用するのには記録と私の許可を取らなければ使用できない事になっている。エーレンフリートは合鍵なんて持ってはいないし、許可も取っていないし、記録上も予備の鍵を使用していない。
 そして、王太子の私室だ。基本的に施錠しないという事は無い」


 私もローデリヒ様の私室の鍵持ってないけど、特に欲しいとも言ったことはないし、使わないな……。予備使うなんて、鍵失くしたとかよっぽどの事しかない。


「ローデリヒの部屋の鍵を持っていないだろう?と父上はエーレンフリートに問い掛けたんだ。私もその場にいた。だからはっきり覚えている。
 ――開いてたんですよ、とエーレンフリートは確かに言った」


 開けっ放しになっていたのか?なんて思ったけど、次のローデリヒ様の言葉で、違和感を持った。
< 574 / 654 >

この作品をシェア

pagetop