この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 何故か得意気なヴァーレリーちゃんとも一週間でだいぶ打ち解けた……とも思っている。ヴァーレリーちゃんは職務だからと堅苦しい話し方だけれど、私は完全にフランクに話していた。

 ちなみにデブ猫ローちゃんは全く痩せない。長期戦覚悟だ。


「赤ちゃん見ると欲しくなるよね〜。お腹にいるんだけどさ」

「確かに子供見ると欲しくなりますね。でもいつかは産むことになりますし、私はあまり焦ってはいません」

「産む……?」


 引っ掛かりを感じたけど、それはとある人の登場によってどうでも良くなった。


「奥方様、ヴァーレリー様、どうなさったんですか?」

「イーナさん!」


 振り返ると今日も簡素なドレスを着て、お団子ヘアーにしたイーナさんが立っていた。今日は一人らしい。


「あれ、アーベルくんは一緒じゃないんですか?」

「アーベル様は陛下とローデリヒ殿下とゼルマ様が見てくださっています」
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