この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「真面目だなあ」と呆れ半分、感心半分で呟いた青年の元に黒いローブを着た者が一人、近づいてくる。


「報告致します」

「おう」

「結界の一部が少々緩んでおりました。度重なる外部からの偵察によるものかと思われます。王城の方もよくこの状態になりますし、定期点検の合格基準内です。今日は補強し直しております。しばらくは大丈夫かと」

「分かった。夜遅くまですまねぇな。ローデリヒ殿下も魔法騎士団長にも給料出すように言っておく、との仰せだ。ありがとな」

「はっ」


 黒いローブの集団は、役目は終わったとばかりにさっさと王城へと引き上げていく。イーヴォはヴァーレリーに向き直った。


「……って事だ。アルヴォネンの王太子夫妻がこちらにやって来るって事で、殿下が少し神経質になってるだけだろ。ヴァーレリーも早く寝ろよ」

「殿下はアルヴォネンの王太子夫妻と奥方様を会わせるつもり?」

「……現状、会わせないってのは難しいかもなあ。自分の国の人間の嫁ぎ先が下位貴族なら、王太子夫妻の歯牙にも掛けないだろうが、上位貴族からは気にするだろ。王族に嫁いだなら尚更じゃねえの?」


 イーヴォは一息ついて、悲しそうな、痛むような顔をする。


「でも、殿下の内心的には会わせたくはないんだろうなあ。だってさ、散々奥方様をコケにした国の人間だぜ?そんなの会わせたくないに決まってるだろ」

「イーヴォはこのままでいいと思ってるの?」
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