ど天然彼氏の可愛がり方。-六花の恋・外伝-【完】

「お、お父さん、お母さん……って、呼んで、いい……?」

二人に向き直った美結が、揺れる声を押し出した。

お父さんは唇を深く噛んで、お母さんは顔を両手で覆ってしまった。

「美結」

それまで黙って見守っていた兄さんが、美結の前までやってきた。

美結に目線を合わせるように、かるくかがむ。

「おかえり。僕の妹」

美結はふるふると震え出した。

「ただ、いま……おにいちゃん……」

美結が小さく言うと、おばさんが両手をおろした。涙まみれの顔で微笑む。

「おかえり、美結……ちゃんと帰って来てくれて、ありがとう……っ」

「美結……ごめん。……ありがとう……」

おじさんも、絞り出した声で言う。

――ああ、大丈夫だ。

この四人は、家族だ。

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