「ねぇ、シェアしない?」


それからというもの、私は高校生活を謳歌した。


達実とは大っぴらにデートできるし、学校ではいじめもない。いつも舞香がそばにいて、色んなものを共有する。


もう友達や親友じゃ片づけられないくらい、私にとって舞香は大切な存在になっていた。


「えっ、こんなのでいいの?」


「そのペン、可愛いじゃん」


「はい、じゃあげる」


なんの変哲もないペンを差し出すと、舞香は顔を輝かせる。


こういうところ、素直でいいなって思う。


お金持ちなのにそれをひけらかすこともないし、私がなにかを借りるたび、舞香も私の持ち物を欲しがった。


それは物々交換みたいなもので。


ブランド品とペンじゃ釣り合わないけど、そうすることで私の気後れを消し去る、舞香の気遣いなんだと思う。


お弁当に始まり、洋服、身につけるもの、筆記用具。


様々なものを『シェア』して楽しんでいた。


そしてそれは、数学のテストの時間。


私は数学が苦手だ。


今回も赤点かもしれない。


難しい問題に頭を抱えていると__。


なにかが飛んできた。


丸まった紙くずを開くとそこには、問題の答えが書かれてある。


えっ?


顔を上げると、斜め前の舞香が振り返り、にっこりと微笑んだ。


これって、カンニング?


< 66 / 206 >

この作品をシェア

pagetop