「ねぇ、シェアしない?」
それからというもの、私は高校生活を謳歌した。
達実とは大っぴらにデートできるし、学校ではいじめもない。いつも舞香がそばにいて、色んなものを共有する。
もう友達や親友じゃ片づけられないくらい、私にとって舞香は大切な存在になっていた。
「えっ、こんなのでいいの?」
「そのペン、可愛いじゃん」
「はい、じゃあげる」
なんの変哲もないペンを差し出すと、舞香は顔を輝かせる。
こういうところ、素直でいいなって思う。
お金持ちなのにそれをひけらかすこともないし、私がなにかを借りるたび、舞香も私の持ち物を欲しがった。
それは物々交換みたいなもので。
ブランド品とペンじゃ釣り合わないけど、そうすることで私の気後れを消し去る、舞香の気遣いなんだと思う。
お弁当に始まり、洋服、身につけるもの、筆記用具。
様々なものを『シェア』して楽しんでいた。
そしてそれは、数学のテストの時間。
私は数学が苦手だ。
今回も赤点かもしれない。
難しい問題に頭を抱えていると__。
なにかが飛んできた。
丸まった紙くずを開くとそこには、問題の答えが書かれてある。
えっ?
顔を上げると、斜め前の舞香が振り返り、にっこりと微笑んだ。
これって、カンニング?