「ねぇ、シェアしない?」


「高梨優子、よく頑張ったな」


数学のテストが返ってくると、先生は私に声を掛けてくれた。


点数は88点。


これも舞香のお陰だ。


社会のテストは舞香が82点で、大喜びをしていた。


私たちは、それぞれが苦手な部分を補ってプラスにしていく。カンニングとはいっても、私は舞香のためであり、舞香は私のためにしていること。


自分自身がズルをするわけじゃないからと、自らに言い聞かせる。


誰にも気づかれることなく、次のテストも合格点だと思っていた__。


「優子、ちょっといい?」


私に声をかけてきたのは、珍しい人物だった。


廊下の端っこで、彩音が向き直る。


久しぶりに顔を合わせて、ちょっと懐かしい感じがしないでもない。彩音はあれから、別のグループに属していて、私たちがこうやって言葉を交わすこともない。


そもそも、私が話しかけるなと言ったんだし。


でも、寂しいって正直に言うなら、また前みたいに仲良くしてあげてもいいかな。


根っから悪い子じゃないし、頭を下げるのなら私は別に__。


「もう、やめたほうがいいよ?」


「えっ?」


「カンニング、してるでしょ?」


それは思いもよらない言葉だった。


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