先生の全部、俺で埋めてあげる。



「里巳くん、夏休み全然図書館に来なかったね」




ドキッとした。




「ちょっと忙しかったんで」


「そっか、そうだよねー」


先生もホッチキスを止めながら言葉を並べる。




「でも、里巳くんがいなくてちょっと寂しかった」




寂しかった?


何でそんなことが言えるんだよ…。


分かっていても無駄に期待してしまう自分が心底イヤになった。




「いつも図書館行くと里巳くんがいたから。
慣れって怖いね」


って先生は笑った。




俺は先生に彼氏がいると知って、寂しいどころではなかったけどね。


と心の中で毒を吐く。




それでも、先生の中に確かに俺が存在しているようで、ちょっとだけ嬉しかった。



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