先生の全部、俺で埋めてあげる。



ベッドの上で相変わらずぼーっと天井を眺めていると、インターフォンが鳴った。


その後すぐにカギをまわす音が聞こえる。




親が帰ってきた?


何故かそう思って、すぐ違うことに気づく。


そっか。
今日は家政婦の今井さんが来る日だった。


重い体を起こして、玄関に向かった。




「あら、夕惺さん。いらしてたんですね」


今井さんには、俺がいない間に掃除やご飯の準備をして欲しいとお願いしてある。


だから、こうやって顔を合わすのはすごく久しぶりだった。




「また時間改めましょうか?」


俺に気を使ってくれたんだろう。


「いいよ、もうすぐ出るから。入って」


お邪魔します、と言って今井さんは靴を脱いだ。




俺は軽くシャワーを浴びて、スマホと財布をポケットに入れ、すぐに家を出た。



< 89 / 338 >

この作品をシェア

pagetop