芦名くんの隠しごと
*
どのくらい経ったのだろうか。
窓の外からほんの少し見える空も真っ暗になり、夕焼けも見えない。
サトルという人も帰ってくる気配もなく、今も花瀬くんと二人きり。
ちなみに、もう私たちの間に会話はなかった。
「………おなかすいた」
いま、何時だろう。
お母さんは帰ってきているのだろうか。
「………ほら、飴」
そう言って花瀬くんが目の前に出してきたのは、ママの味がするあのキャンディ。
「食うか?」
「食べたい……けど、手」
「ああ」
未だに縛られたままの私は、寝転がった状態ではなくなったものの、自由はない。
そのため、キャンディが目の前にチラついても、受け取ることだってできない。
「……ほら。口開けろ」
少しだけドキドキしたのは、きっとこれが“あーん”というものだから。
こんな状況なんだから、ドキドキするのは変だとわかっているけど………やっぱり、慣れないからドキドキしてしまう。