芦名くんの隠しごと



伊織は、ハァ……とわざとらしくため息をついた。


「おれがそんだけで来るとは思ってねえだろ」


「なにかあるんだ?」


「………ほんっと、こえー奴。次の総長はお前だろうな」


“次”の総長、ね。


『白楼は、俺たちの代で終わりにする』
頭の中を木霊した声が、なんとなく後ろめたい思いにさせた。


「さあ、どうかな。で、本題は?」


煉華(れんげ)の連中が、ウチの奴ら襲ってきた」


煉華───昔から白楼と敵対している、暴走族。


前の総長の代はまだマシだったけど………今は関係ない人まで襲うようなクズで構成された族。


「………わかった。夏樹と楓にも伝えとく。負傷度合は?」


「腕折った奴もいるけど、まあ元気だよ」


「そのくらいならすぐに治るか。総長にも伝えておくよ」


「悪いな、康生」


< 169 / 279 >

この作品をシェア

pagetop