芦名くんの隠しごと
伊織は、ハァ……とわざとらしくため息をついた。
「おれがそんだけで来るとは思ってねえだろ」
「なにかあるんだ?」
「………ほんっと、こえー奴。次の総長はお前だろうな」
“次”の総長、ね。
『白楼は、俺たちの代で終わりにする』
頭の中を木霊した声が、なんとなく後ろめたい思いにさせた。
「さあ、どうかな。で、本題は?」
「煉華の連中が、ウチの奴ら襲ってきた」
煉華───昔から白楼と敵対している、暴走族。
前の総長の代はまだマシだったけど………今は関係ない人まで襲うようなクズで構成された族。
「………わかった。夏樹と楓にも伝えとく。負傷度合は?」
「腕折った奴もいるけど、まあ元気だよ」
「そのくらいならすぐに治るか。総長にも伝えておくよ」
「悪いな、康生」