芦名くんの隠しごと
──ナツキくん。
少し掠れた声の、背が高い男の子。
康生くんより少し大きい。
綺麗な黒髪の中に、赤いメッシュが混じっていて、それが余計に綺麗さを引き立てている。
ジーッと見つめていると、こっちを向いたナツキくんと目が合って。
その碧い瞳が、私を捕らえた。
「…誰?」
「…っ、水上野乃…です」
…なるほど。康生くんが言ってた意味が少しわかった気がする。
睨まれてる、感じがする。
ナツキくんも整った顔だから、余計に凄みを感じてしまい、緊張感が増す。
「……康生、俺、ビビられてるのか?」
「野乃は繊細だから。夏樹みたいな見た目だと怖がるかもね」
サラッと“野乃”と呼ばれ、少しドキッとしたかたわら、ナツキくんを怖がりたくない気持ちが芽生えてきたけれど。
ナツキくんと何を話していいのかわからなくて、助けを求めるように康生くんを見る。
「柊夏樹。目つき悪いのは元々だから気にしなくていいから」
素っ気なく聞こえたけれど、彼の頬がほんのり赤くて。
「えっ、あ、うん…!よ、よろしくね」
彼も緊張してたりするのかな、なんて、少し親近感を感じた。