海賊と宝石の歌姫
こんなにも苛立ったのは久しぶりだった。セダは船長室に入るとベッドに腰掛ける。

セダは、女性のことでこんな想いを抱くのは初めてだ。セダにとって女性とは、「欲を満たす存在」だった。相手が求めるなら誰でも相手をする。そうやって生きてきた。

しかし、カヤに対してはそんな風に思えない。セダは大きなため息をついた。



「カヤちゃん!廊下が終わったら広間の方を頼むよ」

「はい!」

セダがアイザックを探して廊下を歩いていると、ほうきを手に船員たちと掃除をするカヤがいた。その顔はきれいな笑顔だ。

カヤは「船でハナダまで送ってくださる以上、私にも仕事を与えてください」と言い、ゴドフリーが船員たちと掃除や料理をすることを提案したのだ。

「船長、お疲れ様です!」

船員たちがセダに声をかける。セダも「お疲れ」と声をかけた。

セダはカヤの方を見る。カヤは黙々と掃除を続けていた。セダの方を向く素振りは見せない。
< 33 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop