BLACK REFLECTION -月の警告-
カーキ色のロングコートに身を包んだ私は、案外このネオン街に馴染んでいるのではないかという錯覚に陥る。
本来なら、馴染んではいけない……ううん、本来ならもなにも、馴染んではいけないのに。
今まで抑えていたのに、ストッパーが外れて溢れ出してしまった衝動は、止まることを知らない。
「……」
───ガゴン
意味もなく自販機でコーラを買い、プシュッと心地いい音をたててから、コーラを口に入れる。
……口に入れる、というよりは。喉に流しこむ、という表現の方が正しかったかもしれないけど。
シュワシュワした炭酸が、私の喉と同時に、冷静さを刺激して。
ニヤニヤした男たちに取り囲まれて、はじめて少しの恐怖心を持った。
「ねーねー、何してるの?」
「おにーさんたちと楽しいコトしない?」
……気持ち悪い。できることなら、その顔面を今すぐ踏んづけてやりたい。できるわけないけど。
「しません。人と待ち合わせしてるので。失礼します」
「待ち合わせ相手さんも一緒に楽しもうよ」