BLACK REFLECTION -月の警告-
「ほんっと、紗菜は頼りになるね」
「やめてよ、そんなんじゃないから」
「またまたー。紗菜は本当にすごいよ」
……うるさい。うるさいうるさいうるさいうるさい。私に他に何を求めてるの?
もし仮に本気で言ってるとしても、私はそんな称賛されるような人間じゃない。
「……ほんとに違うから」
出てきた声は、自分で想像してたよりも随分と冷たかった。
違う、もっと辺り障りなく、笑いながら言うつもりだったのに。
「……ごめんね」
「……うん、」
あの子が今にも泣き出しそうな顔で俯く。
私は「ううん」と否定してあげることができなかった。
「ごめん、わたし、今日は帰るね」
「……うん、」
嫌いなわけじゃないの、
たぶんちょっときらいだけど、嫌いってわけじゃない。
矛盾だらけだし、なに言ってるかわかんないって思われるだろうし、私も思うけど、私は彼女がきらいで嫌いじゃない。
だけど、妙に冷たく当たってしまうこと、大嫌いな言葉が彼女の声で再生されるともっと嫌いになること、そのことだけは、どうやっても消えなくて。