愛染堂市
女はツカツカと、地響きを立てそうな勢いでコチラに向かってくる。
『怒ってるみたいだな?』
ガキは俺の言葉に応える事無く、体を強ばらせたまま、コチラに向かってくる女をただ見つめる。
『しっかし酷い面だな?』
俺がそうガキに言葉を掛けた瞬間、女はガキの前まで来て、有無も言わさず拳をガキの頭に叩きつけた。
ゴツンと鈍い音がハッキリと俺の耳に飛び込んできた。
ガキは頭を両手で抱え、涙目になりながら、その場にしゃがみ込んだ。
『おぉ~かなり強烈だなぁ』
俺がガキに向かって、労いの言葉の代わりにイヤミを一言掛けてやると、女が俺の方へ顔を向けて相変わらず酷い面のまま、俺を睨み付ける。
「―――誰?アンタ?」