愛染堂市
写真には青っ白い顔をした貧弱なアメリカ人が写っていた。


「――しかし、何でこんな小者に俺達外事が動くんでしょうか?」


俺の怪訝そうに写真を眺める姿に同調するように、小池が溜め息混じりに言葉を吐く。


『さぁな・・・俺にも判らん。ただ小者にしちゃぁ、ワザワザ愛染堂経由での密入国とは、この上無いVIP待遇だ。ただの小者じゃねぇって事だろ』


「地元の警察か、地元の公安で何とかなりそうなモンでしょうに・・・」


『バ~カ、あそこの警察がそんなに優秀なら、誰も”愛染堂自治区”なんて揶揄しねぇよ』


俺が最後の一本のセブンスターを口にくわえながらそう言うと、小池は「そうですね」とボソリと言い、「日本一のスラム」と独り言ともとれるように付け加えた。



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