愛染堂市
「なぁヤマモト、歌舞伎町の方で銃撃事件があったらしいんだが・・・お前何か知ってる?」
『いえ、初耳ですけど』
「御代志会は知ってるよな?」
『ええ、関西のでしょ』
「その御代志会の傘下組織の事務所なんだよ」
『あぁ、それで生活安全部の刑事さんがワザワザこんな所まで・・・』
虎心会と御代志会は数年前から敵対関係にある。
『木村さん・・・お門違いってモンですよ。歌舞伎町の方は松木のシマですよ』
「・・・んな事は知ってるよ」
『木村さん、まずは松木の方へ行ってくれよ』
俺は残ったコーヒーを飲み干し、木村に悪態をつきたいのを抑えながら言葉を吐き捨てる。
「そんなに冷たくするなよヤマモト。・・・実はな、ちょっと困ってんだよ」
木村はおちゃらけた表情を少し濁らせ、低いトーンで話し始める。